祖父母の受難
最近、孫による祖父母への凶行が相次ぎ報告されています。その原因に関しては詳しく報道されていないので安易に語ることはできませんが、私の外来にも息子が引き籠って暴れているという相談があります。女の子も引き籠りますが、暴力的な行動をとるのは男の方が多いようです。
本人は学校や社会に復帰したいと思っていますが、体調が悪く、気力も湧かないのでなかなか復帰できません。そんな時に親から叱責されると、切れて暴力をふるうことは容易に想像できます。このような引き籠る子供の特徴は、幼いころから親の言うことをよく聞き、あまり我儘を言わなかったことです。周囲の雰囲気を察して、自分を押し殺してきた子供が、ある時に疲れてしまって、引き籠るようです。両親は多少なりともしつけに厳しく、教育熱心ではありますが、子供を追いつめるような言動はとってこなかったようです。しかし、敏感な子供は、親の期待を過剰に感じ取り、引き籠ったのは親のせいだと、恨むようになります。このような子供たちの特徴は「まじめで、緊張感が強く、気配りができる」ことです。あまりにも気を配りすぎたので疲れてしまったのです。
このような時は両親に子供との接し方をアドバイスし、子供たちには緊張感が軽くなる薬を処方すると、次第に暴力的な行動は減り、多くは学校や社会に復帰します。問題は父親の接し方です。悪気はないのですが、悩んでいる子供たちの背中を押すような言動をとることがあります。本人も学校や社会に復帰したい気持ちがあるのに、それを叱責されると暴力をふるい、殺意に変わることもあるでしょう。その為には父親の接し方、基本的にはあまり関わらないことを説明し、主に対応は母親にお願いします。母親は疲れるので、それを父親が支えることが大切です。しかし、両親への対応をアドバイスしても、祖父母にまでそのような説明はできません。父親よりも世代の上の祖父が一見ぐうたらに見える孫を叱責すると今回のような事件に至ることも考えられます。
そのような例を見てきた私は、数年前に「親を殺したくなったら読む本(マキノ出版)」を出版しました。もし気になることがあれば一度お手に取ってみてください。我儘な孫の世話は大変でしょうが、我儘の方が引き籠りのリスクは少ないかもしれません。もし、手のかからない良い子なら少しは我儘の言える環境を作ってあげることも必要でしょう。現代の子供たちは色々な意味で気を使っていることはご理解ください。